母と共に買い物へ行ってイチゴとロールケーキ買ってきました。今日はイチゴの日って聴いたもので……。
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優起さんが提唱してらした、近侍と新年会に参加する妄想をしようとしたんだけど、万屋前に集まった100組を超える参加者を見て、私の足が止まってしまった。
新年会だからお化粧もちゃんとして、ちょっとおしゃれな服を着て、予定時間通りに出て、集合場所に着いたのに
よその本丸の、きらびやかな刀剣男士各位と共に笑いさんざめく審神者さん方を見て、急に気後れしてしまった。
新年会の主催者である審神者さんの近侍、和泉守兼定が声をかけて、参加者は皆、開催場所の居酒屋に移動していく。
それでも動こうとしない私を見て、鶯丸さんは不思議そうに尋ねる。
「主? どうした。……行かないのか」
「い、行きたくない」
「……そうなのか」
私は俯いた。ぼそぼそと口を開く。
「行き、たく……なく、なっちゃ、った」
「そうか。わかった」
鶯丸さんはそうとだけ言って、そっと私の手を引いて新年会の参加者たちとは反対方向に歩き始める。
私の竦んでいた足も、そっちにはすんなり動くのだからおかしなものだ。
情けない。
どうして。
私は新年会を、楽しみにしていた、はずだ。なのに。
ぽろりと瞳から涙がこぼれて、私は俯いていた顔を更に地面に向けた。
「主は何を泣いているんだ?」
鶯丸さんの穏やかな声が降ってくる。その声が優しくて、更に涙が溢れた。
「う、だって、私、新年会行きたかったはずなのに、そのために準備したのに」
「そうだな」
「なのに、ここまで来たのに、やっぱり行かないて、行きたくないなんて、変だよ……かっこ悪いよ」
「そうだろうか」
「うう……だって、みんな仲間じゃん、審神者で、刀剣男士で、仲間なのに、その集まりなのに、なんで私、怖くなっちゃうの」
歩きながら、鶯丸さんが静かに尋ねる。
「主、今回の新年会、参加するものに直接の知り合いはいなかったろう?」
「……うん」
「ならば初めて会うものばかりだな。よく知らない相手を警戒するのはおかしいことではないさ」
「でも……」
なおもぐすぐすしている私。鶯丸さんが立ち止まった。
「主、顔を上げてくれ」
素直に顔を上げると、鶯丸さんにハンカチで優しく涙を拭われた。あ、これ、いつだったか鶯丸さんにあげたハンカチだ。こんな状況ながら、(ちゃんと使っててくれたんだ)と嬉しい気持ちが湧き起こり、思わず笑みを浮かべてしまった。
鶯丸さんはいつもと変わらず穏やかな落ち着いた表情をしていて、私の顔を見て微笑んだ。
「せっかくの化粧が流れてしまったな。君は素顔のままでも愛らしいが」
不意打ちの褒め言葉に思わず涙が止まってしまう。
頬が熱くなっていくのが自分でもわかった。
鶯丸さんが笑みを深くする。そっと私の両肩に手をかけ、こちらの顔を覗き込んだ。
「なあ、主。出来なかったことを憂えるのではなく、出来たことを尊ばないか」
「出来た、こと……?」
聞き返した私に、松葉色の髪を揺らして頷く。
「君は今日のために化粧をし、晴れ着を着て、時間通りに外出した。予定通りに集合場所に着いた。それが『出来たこと』だ。立派なことだ」
鶯丸さんの言葉に、はっとして目を瞬かせる。どれも取り立てて褒めるようなことではない、当たり前のような事。だけれど、それを立派だと言ってもらえたことで、暗闇の中寒さに震えてところに光が差し込んだような心地だった。
彼は私の目を真っ直ぐに見た。橄欖石(ペリドット)のような瞳がきらきらと輝いている。
「格好悪くなんてない。俺のいっとう美しい可愛い人だ」
微笑む鶯丸さんの方こそ、本当に美しくて、優しくて。
じわりと胸に温かなものが広がっていく。止まったと思った涙がまたほろりと流れた。
「……あ、りが、とう……」
「さて、この近くに手洗いがあったな。化粧直しをするか、いっそ落としてしまえ。そうしたら、一緒にゆっくり茶でも飲もう」
鶯丸さんはにこにこ笑って私の手を引いた。
「今日は俺とでえとに来たのだと、そういうことにしないか、主」
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と、すごい荒削りだけどそういうネタが降ってきたのでブログに置いておきます……。
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